2025年10月
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AGAの治癒とはどこを目指すことなのか
「AGAが治る時代」という言葉を聞くと、私たちはつい、薬も何も必要なく、若い頃のようなフサフサの髪が永遠に維持される「完治」の状態を想像しがちです。しかし、現実的なゴールとして、「治る」という言葉の定義をもう少し広く捉えてみることも重要かもしれません。例えば、医療の世界には「寛解」という状態があります。これは、病気の症状が一時的、あるいは継続的に軽減・消失した状態を指します。現在のAGA治療は、まさにこの寛解を目指すものであり、薬を続けることで薄毛が気にならないレベルを維持できるのであれば、それは一つの「治った」形と考えることもできるでしょう。未来の治療法が目指すゴールも、一つではないはずです。一つは、先述したような完全な「根治」。これは、iPS細胞による毛髪再生や遺伝子治療など、根本原因を取り除く革新的な治療法によって達成されるかもしれません。もう一つは、「機能的治癒」です。これは、例えば年に一度の注射や、数年に一度の処置を受けるだけで、長期間にわたって髪の状態を維持できるような治療法を指します。毎日の投薬という煩わしさから解放されるだけでも、生活の質は劇的に向上するでしょう。さらに言えば、個々人にとっての「治る」の定義も様々です。必ずしも20代の頃の毛量に戻る必要はなく、「年齢相応に、清潔感のある髪が保てればそれで満足」という人もいるでしょう。大切なのは、テクノロジーの進歩に期待を寄せつつも、自分自身がどのような状態をゴールとしたいのかを考え、現在の治療法も含めた様々な選択肢の中から、自分にとっての最適な「治癒」の形を見つけていくことなのかもしれません。