かつて人類は、多くの病を「不治の病」として恐れてきました。結核、天然痘、ペストなど、一度かかれば死を待つのみとされた病は数多く存在します。しかし、医学と科学の進歩は、それらの病を次々と克服してきました。抗生物質の発見は細菌感染症の治療に革命をもたらし、ワクチンの開発は多くの感染症を根絶、あるいは予防可能なものへと変えました。ほんの数十年前まで、HIV感染症は致死的な病とされていましたが、今では適切な治療を続けることで、ウイルスの増殖を抑え、健常者と変わらない生活を送ることが可能になっています。これらの歴史を振り返ると、AGA治療の未来にも大きな希望を見出すことができます。現在、AGAは「進行性であり、完治はしない」とされています。これは、かつての生活習慣病や慢性疾患が置かれていた状況と似ています。しかし、病気のメカニズムが解明され、分子レベルでの理解が深まるにつれて、革新的な治療薬が次々と登場し、多くの患者の運命を変えてきました。AGAも同様の道を辿る可能性は十分にあります。原因となる男性ホルモンや遺伝子の働きが詳細に解明され、再生医療という新たな武器も手に入れた今、治療法のパラダイムシフトが起きる土壌は整いつつあります。もちろん、AGAは生命に直接関わる病ではないため、他の疾患に比べて研究開発の優先順位やスピードが異なるという側面はあります。それでも、QOL(生活の質)を著しく向上させるという観点から、その研究の重要性は増すばかりです。医学の歴史が証明しているように、人類が「治したい」と強く願い、探求を続ける限り、「不治」という言葉はいずれ過去のものとなるのです。