「痩せれば髪も健康になる」という考えは、多くの場合正しいと言えますが、そのアプローチを間違えると、かえって深刻な抜け毛を引き起こす危険性があることを知っておく必要があります。特に注意したいのが、極端な食事制限を伴うダイエットです。例えば、「リンゴだけ」「こんにゃくだけ」といった単品ダイエットや、カロリーを極端に抑えるような方法は、体重を急速に落とすことができるかもしれませんが、体は深刻な栄養失調状態に陥ります。私たちの体は、生命維持に不可欠な臓器、例えば心臓や脳に優先的に栄養を送るようにできています。そのため、栄養が不足すると、生命維持の優先順位が低い髪の毛や爪への栄養供給が真っ先にカットされてしまうのです。髪の主成分であるタンパク質はもちろん、髪の成長をサポートする亜鉛や鉄分、ビタミン群が不足すると、毛母細胞は活動を停止し、成長期にあるはずの髪の毛が、一斉に休止期へと移行してしまいます。これが「休止期脱毛症」と呼ばれる状態で、ダイエット開始から2〜3ヶ月後に、突然ごっそりと髪が抜けるという形で現れます。一度に大量の髪が抜けるため、精神的なショックも非常に大きいものです。痩せたいという気持ちが先行するあまり、健康を犠牲にしては本末転倒です。真に髪のためになるダイエットとは、必要な栄養素をしっかりと摂取しながら、摂取カロリーが消費カロリーをわずかに下回る状態を維持し、時間をかけてゆっくりと体重を落としていく方法です。健康的な体があってこそ、健やかな髪は育ちます。目先の体重の数字に惑わされず、長期的な視点で自身の体と向き合うことが何よりも大切なのです。